新人画家、山内の意欲的な個展。
室内を楽しく飾りつけた。山内による、「何処にもないお部屋」。
もちろん女王たちは、居る。布地を使って、その模様を油で描く絵だ。
ポップでもない。ネオ・ジオでもない。
既製品を選んで、描いて、「飾りつける」。過去へのフェティッシュな退行か?物品の招魂か?ちがう。絵画だ。じゃ、絵画って何?
皮膜のことだろ? 何の? 世界と身体のあいだの!しかも眼に仮託した!
それが、記憶の海を泳ぐ身体。私と公の鏡に見えた。たぐい稀な。だから美術。その肉体の危うさ。愛おしさ。
多くの人を楽しませた。画廊も思い切った。
奇しくも2年前、卒業して昭和シェル石油現代美術賞を獲った。卒業制作は、小さな部屋に絵を飾りつけた。
ぴったりと絵が呼吸する。貼りついてくる。剥がれる。そして追いかけてくる。
この空気感。おもしろい。肌に染みついて来る。人をそらさない。
空間が身体。匂いや空気にこだわる。そんな、職人気質のアーティストがいる。
ピンクやブルーの、チェック模様の布地。そして、身の回りのお茶碗。写真に撮って焼きつける。オレンジ色の、ビニールの、テーブル・クロス。
記憶の海に、また「私の模様」を描く。
五感を揺さぶる触覚が命。皺と染み。ほつれるモノ、汗ばむモノ。それをクールに描く。
科学者的な錬金術。その果ての、ほんの、淡い、フェティッシュの残り香。
俺も、レゴ・ブロックは捨てたくはない。大人になっても。夢に見る。棺おけに入れてもらう物品のひとつ。だが、もう無い。
こんなやり方、知らなかった。
山内、ガンバレ !(オリンピックみたい)。
美術手帳 P.168
美術出版社
(NOVEMBER/2000)
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