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    「山内崇嗣のビーズの作品を巡るメモ書き」布施知範(1998)

     これらの作品は、ビーズでビーズのかたちを作ったものです。少しはなれたときに見 える作品全体のかたちは、そのかたちを作っている小さなビーズ一つ一つのかたちを拡 大したものです。同じやり方をくりかえして、ビーズで作ったビーズのかたちで、もっ と大きなビーズのかたちを作ることもできます。

     すべての芸術作品は、それぞれ、いくつものレベルで複数のかたちを持っています。 絵画ならば、まず筆でのせられた絵の具の小さな盛り上がりのかたち。そして、その絵 の具で描いてある部分部分、たとえば絵のなかの木の一本一本のかたち。さらにそれら の部分部分があわさって、全体の風景、たとえば森や山のかたち。最後にはその絵のキ ャンバスの四角いかたち。それらはすべて違うかたちですが、どれ一つ欠いてもその絵 にはなりません。それは彫刻でも同じです。つまり芸術作品は、いろいろなかたちがあ わさって、一つの作品を成しているのです。しかしその中から一つのかたちを見つけて 、それを見たとき、それ以外のかたちは見えなくなってしまいます。

     この作品も、二つのレベルでかたちをもっています。つまり、全体として見える円筒 形のかたちと、それを作っている小さなビーズの円筒形のかたち。この作品でも、その ふたつのかたちは、やっぱりどちらか片一方しか見えていないはずです。小さなビーズ のかたちをみている時は、作品全体のかたちは見えないし、作品のかたちを見ていると きは、小さなビーズはつぶつぶにしかみえない。しかし、やがて私たちはその二つが同 じかたちをしていることに気づきます。つまり、離れたときに見える全体としての円筒 形は、それを形作っている(素材である)ビーズをモデルにしたものなのです。それに 気づいたとき、私たちはどちらか一つのかたちを見ることによって、もう一方のかたち をも見ている状態におちいります。これをなすために、この作品では、それ以外のかた ちは追い出されています。つまりビーズが他の何にも(キャンバスや台座に)頼ること なく、それだけで自分のかたちを作っているのです。